生まれたその日から、牛の「能力」がわかる
ゲノミック評価とは、既存の育種価を求める際の情報にDNA型情報を加えて計算し、和牛の遺伝的な能力(育種価)を評価する方法です。生まれたばかりの子牛や、全きょうだい(父牛と母牛が同じ)であっても、その牛ごとの違いを評価することができます。

従来の育種価との違い
鹿児島県の和牛は、第11回・第12回全国和牛能力共進会で連続日本一を獲得するなど、飼養頭数・能力ともに全国トップクラスを誇ります。特に産肉能力(枝肉6形質)については、平成3年からスタートした公益社団法人全国和牛登録協会による育種価評価事業に、生産農家・肥育農家の皆さんをはじめ関係者が一丸となって取り組んだことにより、その能力がかなり向上しました。
子牛登記証明書や登録証明書に表示されている産肉能力(枝肉6形質)の育種価は、全国和牛登録協会の育種価評価(アニマルモデル)事業において算出された数値に基づいてA・B・Cで表示されており、子牛セリ市名簿に表示されている産肉能力の期待育種価はA・B・H等で表示されています。これらの育種価は、約30年以上にわたってデータを収集して求められたものであり、現在でも優れた評価値です。
他方、最近ではゲノミック評価についても、データを収集しながら正確性が検証されており、他県においては生産現場で積極的に活用されている状況もあります。さらに、ゲノミック評価は産肉能力(枝肉6形質)だけでなく、脂肪酸組成(MUFA割合・オレイン酸割合)や発育関連形質にも対応できるようになってきています。
| 従来の育種価(アニマルモデル) | ゲノミック評価 | |
|---|---|---|
| 評価の仕組み | 血統情報から算出 | 血統情報に加えて、遺伝子の組み合わせを考慮して算出 |
| 結果が出るまで | 約5年 | 生後すぐ |
| 個体差の識別 | きょうだい牛は同じ平均値 | きょうだい牛でも個体差がわかる |
| 対応形質 | 産肉能力(枝肉6形質)脂肪酸・分娩間隔 | 11形質(脂肪酸・発育含む) |
11の形質を同時に評価
| 枝肉 6 形質 | 枝肉重量・ロース芯面積・バラ厚・皮下脂肪厚・歩留基準値・脂肪交雑 |
|---|---|
| 脂肪酸組成 2 形質 | MUFA 割合・オレイン酸割合 |
| 発育関連 3 形質 | 生時体重・在胎期間・日齢枝肉重量 |
鹿児島県では、脂肪酸組成2形質に関するデータは収集されているものの、判明率がやや低い状況にあります。発育関連については、評価のためのデータが殆ど収集されていません。しかし、生時体重の遺伝的な能力の把握は難産の予防に、在胎日数の把握は分娩間隔の短縮に、日齢枝肉重量は肥育期間短縮の検討のために参考になるものと言われています。
この評価成績書のポイント
近年注目されている肉の美味しさに関わるMUFA(一価不飽和脂肪酸)割合・オレイン酸割合がともに平均以上の評価が出ています。産肉能力においてもBMS-No.・歩留基準値・皮下脂肪厚がすべてH(上位10%以内)と高水準で、美味しさと産肉能力を兼ね備えた牛の実際の評価例です。
検査の種類
雌の場合(評価機関:一般社団法人 家畜改良事業団)
1.枝肉6形質のみ
2.枝肉6形質及び脂肪酸組成2形質
3.枝肉6形質及び発育関連3形質
4.枝肉6形質及び脂肪酸組成2形質及び発育関連3形質
5.脂肪酸組成2形質及び発育関連3形質(枝肉6形質評価済みに追加の場合)
雄の場合(申込を一時的に休止しています)
1.枝肉6形質のみ
2.枝肉6形質及び脂肪酸組成2形質
ゲノミック評価の活用でできること
子牛の選抜・保留の判断
より能力の高い子牛が生まれる交配計画
受精卵(ET)のドナー選定
種雄牛造成の候補選抜
ご利用にあたって
いくらゲノミック評価が高くても、牛の表現型(体型)は大事です。発育に代表される牛の大きさや、足腰の強さ、肩の状態(付着)などはとても重要な要素です。選抜や保留を検討する際は、ゲノミック評価だけでなく、体型等も含めて総合的にご判断ください。
また、ゲノミック評価成績書に記載される育種価のH・A・B・C・Dの区分は、本県で表示されている育種価と単純に比較できませんので、ご留意ください。
一度の検査で将来の情報も
新しい育種・改良体制への移行という観点からもゲノミック評価の利用は重要です。家畜改良事業団によれば、現在評価している形質以外についても検証や研究が進んでおり、今後評価する形質が増える可能性があります。一度検査しておけば、再度試料を採取することなく分析が可能です。


